月刊彗星マジック 定点風景第1夜~第11夜
2010/05/11-2011/04/12
月刊彗星マジック
定点風景第1夜~第11夜
@in→dependent theatre 1st
第1夜~4夜、第6夜~11夜
脚本・演出:勝山修平
第5夜
原案:勝山修平
脚本・演出:泉寛介(baghdad cafe')
出演
- 木下朋子(彗星マジック)
- 小玉藍
- 小永井コーキ(彗星マジック)
- 寺尾有司
- 成瀬トモヒロ
- 西出奈々(彗星マジック)
- 第3夜ゲスト:春海るり(演劇畑ハッピーナッツ)
作品
宇宙が膨張した世界。
夜空に星が消えた世界。
森が広がり続け、森を挟んで北と南が戦争を続ける世界。
世界に関係する物語、関係のないささやかな物語。
シリアス、コメディー、ミステリー。
毎月変わるテーマ。それぞれ独立。
だけれど、どこか繋がっている短編の物語たち。
第1夜 -蠍の火と少女-
海よりも広い森の中にそびえ立つ灯台。
その火は、鬱蒼とした森の真っ暗闇な中でも淡く力強く輝いて
飛空機(ひくうき)乗りの心を暖めてくれる。
ある日、その灯台守になった少女・ベロニカ。役目は、「灯台の火を絶やさないこと」。
森に耳を傾け、大人たちの言葉を受け止めて
純粋無垢な少女は、自分に課せられた仕事の本当の意味を知る。
第2夜 -ウマオの災難-
むかーしむかしあるところに、たいそう仲の良い親子がおりました。
おとう と むすめ です。
でもそんな親子が離れ離れになってしまいました。
戦争の所為です。
おとうは戦います。
早く戦争が終われば、早く大好きな娘のもとに帰れると信じて。
常人とは思えないようなアクロバティックな戦法で
体ひとつで飛空機まで落っことしてしまって
ところがおとう勘違い、その飛空機は味方のものだったのです。
うっかりおとうは、牢屋で10年も過ごしてしまいました。
そして。
ついにおとうは、むすめと再会することになります。
ところがそこで、思わぬ事態に遭遇するのです。
第3夜 -星のラケータ-
星がなくなった夜空のある世界。
どこまでもひろがる大きな森の中に立つ灯台の光は、
たった一つだけれど夜空の星を思い出させてくれる。
その灯台の光が何を燃やしているか想像もしないで。
「ヒコボシに会いたいの」という女・オリヒメと出会ったヤコブは彼女が外の世界へ出てしまわないように閉じ込めてしまった。
愛は、愛。
夜空を見上げても星は見当たらない。
見えるのは灯台の光だけ。
ヒコボシは、見えない。
そんな世界でオリヒメが見たものとは。
第4夜 -have a bite-
生きるために食う。食うために生きる。
「自分は森からうまれた」という存在に出会ったアリサ。容姿は人間そのもの。
ヒトとの接触で感情を持った「森」が成長するために不必要な感情を切り離した、それが自分なのだとその存在はいう。
「もっと食べたい」という感情を切り離されたその存在・カーチャは戦争で食べ物が無くなっていった森でヒトの死体を食おうとしていた。
もう動かない、喋らない、何も生み出さない、それをなぜ食べてはいけないのか。
アリサはどう、答えを出すのか。
第5夜 -亡命少女-
その世界には星がない。
その国の森の奥には灯台がある。
灯台の光は今はない星のようにきれい。
でも灯台にいるあの少女は悩んでいる。
火の前でじっと。
静かに。
なんで?
いろんなものを見たり感じたりしたからでしょう。
人が人でなくなる。
亡くなる。
これはちょっと大変なことだ。
大変だけど、でも実はそんなこと、ありふれてる。
今、自分がいる場所から、違う場所へと移動をする。
これがネガティブだと「逃避」とか言い、ポジティブだと「明日への一歩」なんて言う。
これもまた、ありふれたことだ。
その足を動かすのにどれだけの力や思いがあるかわからんけども。
ありふれた事でありふれてしまった世界で、少女はふと歩きはじめてしまいました。
どこへ?
第6夜 -或る学者の最後の論文-
ひとりの老人が黙々と人形を彫り続けている。
並べられた人形たち。
今まで出会った人たちにも似ている、その人形たち。
「愛とは、何か」
或る哲学者・ヤコブはずっと答えを求めていた。
求め続けて生きてきた。
そしてその答えに年月を経た今やっと、たどりついた。
第7夜 -花のみぎわに-
星がなくなった世界。
人々は夜空を見上げることをしなくなってしまった。
戦争が終わらない世界。
飛空機は今日も戦争のためにどこかへ飛んでいく。
それを見上げる人々。
祈る星は夜空に輝いてはいない。
そんな世界に一人の少女がおりました。
その少女は戦争が始まるころから、森が広がっていったころから、星がなくなってしまったころから、ずうっと昔からかわらない姿でみんなと一緒にいました。
少女はどこから来たのか。
そしてどこへ行くのか。
星がなくなってしまった夜空に、星が戻って来る物語。
第8夜 -汽車、手紙。呼び声-
ベロニカはひとりで汽車に乗っていた。
乗客はまばら。
停車もせず行き先も告げない汽車。
ベロニカは言葉を発する。
それは誰かに宛てた手紙なのか
誰かがベロニカに対してそう、思っただけなのか。
灯台守として役目を果たしていたはずの彼女が今、思うこと。
第9夜 -ひとひとと(前編)-
木々が豊かなとある村に、ミーシャという活発な青年が暮らしていました。
発達や発展を特に望むこともなくのんびりした村人たち。
そんな村にあるとき、木彫り職人がやってきました。
「この村の木々はみずみずしくて、良い人形が彫れます」
村人たちはミーシャを筆頭に木を伐採し土地を広げ田畑を作り
やがて村はとても豊かになりました。
ところが。
木を切った次の日から
奇妙なことが起こり始めたのです。
第10夜 -火とひとと(後編)-
-広がり続ける森の木の正体は「人」である-
ミーシャことミハイルは昔のことを思い出した。
しかしヤコブは云う。
「私は森を焼き払うぞ」
広がり続ける森のせいで住む土地を奪い合うための戦争が起こっている。
それを止めるために。
村人から厚い信頼を寄せられているヤコブは
夜空に戻って来たたった1つの星を偶像として宗教をつくる。
そして。
たくさんの信者たちに命じ、森に火を点けてしまったヤコブ。
その所業の顛末。
第11夜 -定点風景-
むかしそこには1本の木が、ありました。
そしてそこに毎日やって来て絵を描く、「君」がいました。
人は星を開拓し燃料を作ります。
だけども星は枯渇して、夜空はとても殺風景です。
「君」は毎日やってきて「僕」を描く。「僕」に話しかけて表情をころころ変える。
「僕」は丁寧に、「感情」を学んでいきました。
やがて1枚の絵が完成しました。
そしてあるときからふっと、「君」は来なくなってしまいました。
「君」は毎日来ていたのに。「僕」は「君」のことを何も知りませんでした。
「僕」も絵を描く。「君」の絵を。
できあがったころ、「君」が、再びこの丘へやって来た。
そして「君」は話す。自分のことを。
彗星マジックがお送りする「定点風景」
始まりの終わり。